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介護は人なり 3

2016年02月08日(月)14:46

介護業界の労働状況を、事業の立場と職員の立場から考える

〜介護労働の実態調査から見えてくるもの〜



 厚労省が発表した「介護サービス施設・事業所調査」の資料によると、介護保険制度が施行された2000年には55万人であった介護職員の数は2015年度には約167〜176万人になり、2025年度には237〜249万人に増加すると推計されている。約70万人もの人間が介護業界に流れていくとみられているのだ。介護事業所数に関しては平成25年度の調査で訪問介護が32.761施設で前年度から1,686施設増え、通所介護が38,127施設で前年度より4,020施設増えた計算になる。これからも高齢化率は高まっていくと推計されている状況を踏まえると、まだ施設数も伸びていくと考えられる。



※平成25年度介護労働実態調査結果について

事業所向けの調査方法は全国の介護保険サービス事業を実施する事業所のうちから無作為抽出により17,500事業所を選出し、調査票を郵送にて配布、うち有効回答率は45.8%で、7,808事業所からの回答を集計した結果となっている。介護労働者向けの調査方法は事業所向けに抽出した事業所の中から1事業所あたり、介護のかかわる労働者3名を上限に、無作為に選出した52,500人に対し調査票を配布した。有効回答率は36.9%で、18,881人からの回答を集計した結果となっている。いずれも調査期間は平成25年10月1日〜31日。



職員数は増えながらも、処遇が改善できない現状



 まずは事業者調査の方の全体像をみてみると、平成24年10月1日から平成25年9月30日の1年間の採用率は21.7%、離職率が16.6%で増加率は5.1%となった。増加率の内訳をみてみると、正規職員が4.1%、非正規職員が6.2%となっている。業界全体としての職員数は増えながらも、割合としては非正規職員の増加率が高いことが分かる。



 従業員過不足の状況に関する問いでは、「不足感」(大いに不足、不足、やや不足と応えた人数の合計)の全体は56.5%で半数以上の事業所が人手不足を感じている。「適当」と回答した事業所は43%、逆に「過剰」と応えている事業所は0.5%となった。内訳を見てみると、訪問介護職員に対する不足感が高く、73.6%となっている。不足している理由としては、「採用が困難である」が68.3%、「離職率が高い(定着率が低い」が17.5%となっている。



 採用が困難な理由をさらに尋ねたところ(複数回答あり)、「賃金が低い」が55.4%、「仕事がきつい」が48.6%、「社会的評価が低い」が34.7%、「休みが取りにくい」が21.5%と高い割合を占めている。



 

 介護サービスを運営する上での問題点への回答(複数回答有り)では、「良質な人材の確保が難しい」が54.0%とトップで、「今の介護報酬では人材確保・定着のために十分な賃金を支払えない」が46.9%、「経営(収支)が苦しく、労働条件や労働環境の改善をしたくても出来ない」が26.8%となっている。



 これらの問題点は、いずれも介護職員の確保に関することで、介護報酬制度に頼りながら、少ない原資の中でのスタッフ確保を余儀なくされている状況が見えてくる。



 次に高い割合を示した問題点は、「指定介護サービス提供に関する書類作成が煩雑で、時間的に追われている」が30.7%、「教育・研修の時間が十分にとれない」が24.8%と、業務の煩雑さから研修などの時間を割くことができない状況が見えてくる。そのほかに目立つものとしては「新規利用者の確保が難しい」24.3%、介護従事者のスキルや意欲の不足、事業所内でのコミュニケーション不足の問題があがっている。



 いずれも介護事業者が自身で解決できそうな問題としては、利用者獲得、介護従事者のスキル・モチベーションアップ、事業所内でのコミュニケーション改善などで、介護報酬に関するところは個別にはどうしようもないのが現状だ。介護職員処遇改善加算に伴う経営面での対応状況を聞いた問い(複数回答有り)では、「一時金の支給」が60.9%、「諸手当の導入・引き上げ」が48.6%で、「基本給の引き上げ」の29.4%を大きく上回っている。職員に対して月々の待遇を良くできている事業所は少ないようだ。

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